奥州・金ケ崎

「椎名家資料」特別公開 整理に区切り、来月シンポ 研究会【奥州】

椎名悦三郎資料公開記念シンポに先立ち後藤新平記念館で行われている特別公開

 奥州市教委は、研究者の協力を得て「椎名家資料」の整理を進めている。このうち椎名悦三郎(1898~1979年)関係資料の整理に区切りが付き、近く資料が公開される。研究者で構成する「椎名悦三郎・椎名素夫研究会」(代表・伏見岳人東北大教授)は、3月5日に同市江刺で資料公開記念シンポジウムを開催。シンポに先立ち、今月17日に同市水沢の後藤新平記念館で関係資料の特別公開が始まった。伏見代表(43)は「資料整理は学問研究上も貴重な経験となった。椎名とのゆかりを大事にしようという地域のネットワークがあったと感じた。貴重な資料を見てもらいたい」と話している。

 椎名悦三郎・素夫親子の遺族が2017年、地元事務所などで保管されていた膨大な資料を同市に寄贈。市教委は同年から多くの研究者の協力を受けて資料整理作業を進めている。市教委によると、資料は「少なくとも1万点以上」といい、そのうち約3000点の整理が終わり、椎名悦三郎関係の約1000点を公開するめどが立った。

 公開を予定するのは、外務大臣、通産大臣、自民党副総裁、内閣官房長官などを務めた椎名悦三郎の物。1955年の衆院議員初当選から葬儀までに作成された公文書や自民党の内部文書、外交官による回顧録、メモなどという。市教委では公開に向けて目録の整備を進めており、近くインターネットで閲覧可能な資料となる見込み。

 3月3日までの特別公開では、文書資料のほか、日韓基本条約締結時に韓国側から土産として贈られた屏風(びょうぶ)、勲章など合わせて20点を展示。文書では同条約締結を回顧する記録、日中国交正常化交渉の会談内容、インタビューメモなどを陳列。文書の所々に椎名が鉛筆書きしたメモもある。

 屏風は6曲で、各扇には絹布に花の図柄が絹糸で刺繍(ししゅう)されている。花や葉の模様まで再現した精緻な刺繍は「蓮」「木蓮」「菊」といった白い花と「仙人掌(サボテン)」「聖誕花(ポインセチア)」「牡丹」といった赤い花。屏風は同シンポの会場でも披露する考え。

 椎名家資料について伏見代表は「日本の指導者の資料が大量に地方で見つかるのはかなり珍しい。最初に見た時は、遺族から寄せられた生の手付かずの資料に驚きを感じた」とし、「資料の整理と調査を進める中で椎名とのゆかりを大事にしようという地域のネットワークがあったと感じられた」と語っている。

 同シンポは、3月5日午後1時からお休み処えさし藤原の郷映像館で開催。伏見代表のほか、麻田雅文氏(岩手大)、井上正也氏(慶応大)、加藤聖文氏(国文学研究資料館)、高橋和孝氏(市教委)が研究報告を行う。会場の定員は70人で、同時に動画投稿サイト「ユーチューブ」で配信予定。伏見代表は同シンポについて「公開される資料についての研究報告を行い、資料の価値や活用方策を探っていく」としている。

 同シンポの申し込み、問い合わせは、えさし郷土文化館=0197(31)1600、Eメールesashi-museum@esashi-kaihatsu.co.jp=へ。

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