奥州・金ケ崎

椎名資料 貴重な資源 研究者が活用策展望 公開記念シンポ【奥州】

椎名悦三郎の資料について研究報告などが行われたシンポジウム

 椎名悦三郎資料公開記念シンポジウムは5日、奥州市江刺のお休み処えさし藤原の郷で開かれた。市教委が研究者の協力で整理を進めてきた「椎名家資料」のうち、内閣官房長官、自民党副総裁などを務めた椎名悦三郎(1898~1979年)関係が公開に向けて区切りが付いたため。資料について研究者が報告し、貴重な地域の資源としての活用策を展望した。

 「椎名家資料」は椎名悦三郎・素夫親子の地元事務所で保管され、遺族が2017年に市に寄贈。悦三郎関係はシンポまでに1152点が目録化された。シンポは研究者で構成し整理にも携わった「椎名悦三郎・素夫研究会」が主催。約70人が来場した。

 研究報告では同会代表の伏見岳人東北大教授、市教委歴史遺産課の高橋和孝主任学芸員、井上正也慶応大教授、麻田雅文岩手大准教授が登壇した。

 このうち伏見代表は「悦三郎の没後に伝記が編纂(へんさん)された際、対外関係の資料は水沢の事務所へ移管された」と説明。伝記では外相として韓国と国交を正常化した日韓基本条約実現などの功績から外交指導者の側面が強調された一方、内政面はあまり書かれなかったといい「これを補うのが水沢の資料。伝記と合わせて政治家・人間としての全体像に迫れることが発見と資料公開の意義」と強調した。

 また井上教授は、資料から発見された無題のファイルをピックアップ。悦三郎が通産大臣を務めた池田勇人内閣の成立直前直後の物で、ソ連、中国の動向や自民党反主流派の言動などが記録されていた。直前の岸信介内閣が安保闘争で退陣したのを機に、衆院選で東側陣営との外交が争点となることや、反主流派が絡む党分裂などを警戒し情報を収集していたとみられる。井上教授は「外交と党対策は悦三郎が生涯重視していたこと」と読み解いた。

 報告後の登壇者らによるトークで、加藤聖文国文学研究資料館准教授は「市民の皆さんにも資料が自由に見られるようにするには条例などのルールづくりが必要。歴史資料をどう活用するかという自治体の理念にも関わること」と指摘。「全ての資料が東京にだけあればいいというものではないため、保存はそれ以上の意味を持つ」(井上教授)、「県に公文書館がない分、各市町村の文書への意識は非常に大切。後藤新平関連のように、原本資料が地元にあることは強みにもなる」(麻田准教授)などの声もあった。

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