後藤の出身地で公演「楽しみ」 加藤登紀子さん思い語る 18日、ウクライナ支援事業 奥州市
奥州市はウクライナ支援事業として、18日に「加藤登紀子コンサート2023~果てなき大地の上に~」を同市水沢の市文化会館(Zホール)で開く。加藤さんは2022年5月にウクライナ支援のチャリティーアルバム「果てなき大地の上に」をリリース。同市出身の先人後藤新平に対する思いも深い加藤さんから、音楽を通じて平和や愛を訴え続ける信念や今回のコンサートへの思いを聞いた。
―チャリティーアルバムに込めた思いは。
ウクライナ侵攻に心を痛めていた時、知床半島の海難事故が発生した。自分の歌で応えていかなければならないと思った。
アルバムに入れた「花はどこへ行った」は、米国フォークソングの祖ピート・シーガーの曲だが、ウクライナのコサックの子守唄から作られた。今こそ戦争で苦しんでいる人たちに子守唄として届けられたらと願っている。
「百万本のバラ」はラトビアの子守唄がルーツ。この子守唄は母親の子供を思う心情が表れている。作曲したライモンズ・パウルスが、1991年のラトビア独立運動で先頭に立って人の鎖を作り、ソ連軍の戦車が広場に侵入するのを阻んだのをニュース映像で見た。以来、歌詞の中にある「バラ」は人々のことと感じ、人々が広場を埋め尽くすイメージが浮かんでくる。手をつなぎ平和を訴えている気持ちを託して作ったと思う。
このアルバムは、戦争で再び故郷を追われ、それでも頑張って前を向こうとしている人へ思いを込めて、売り上げ全てをJCF(日本チェルノブイリ連帯基金)を通じてウクライナ支援に使ってもらう。
―コンサートへの思いを聞かせてほしい。
奥州市でのコンサートには、もう一度自分自身の着地点を確かめる意味合いもある。後藤はロシア革命後の日露関係悪化を心配し、父が卒業したハルビン学院をつくった人物。私がこうしているのは後藤のおかげでもあり、出身地でのコンサートを楽しみにしている。
これまでのコンサートなどを通じて東北の人たちには、生きる力の強さがあり、しっかり地に根が付いていると感動している。後藤の哲学を生み育てた風土であり、今で言えば大谷翔平さんを含めて、生きる力を誇りにしてほしい。
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加藤さんは1943年、中国東北部ハルビン市生まれ。終戦後母ときょうだいと共に引き揚げ。東京大在学中の65年に日本アマチュアシャンソンコンクールで優勝し、歌手デビュー。「赤い風船」(66年)で日本レコード大賞新人賞、「ひとり寝の子守唄」(69年)と「知床旅情」(71年)で同歌唱賞を受賞したほか、「百万本のバラ」「時には昔の話を」「難破船」などのヒット曲で知られる。海外での活動も多く、国内外で活発にコンサート活動を続けている。
コンサートは18日午後4時開演。入場料は3500円(当日は500円増し)。問い合わせはZホール=0197(22)6622=へ。