奥州・金ケ崎

宗任、経清に思いはせ 大作7点きょうから展示 水沢・書家 佐藤さん【奥州】

17日からの書作展「鳥海柵と豊田館」に向けて最後の書に挑む佐藤さん

 奥州市水沢東大通りの書家佐藤紫雲さん(本名章)(68)の書作展「鳥海柵(とのみのさく)と豊田館」は、17日から同市水沢佐倉河のめんこい美術館で開かれる。開幕前日の16日、佐藤さんは会場で最後の作品「豊田に北天の耀星」を書き上げ、展示予定の大作7点がそろった。佐藤さんは「知勇兼備の安倍宗任と藤原経清に焦点を当て、北の矜持(きょうじ)を高らかに歌い上げる気持ちで書き上げた」と話している。

 佐藤さんは同市生まれ。盛岡女子高校で書を指導している。2020年以降、「蝦夷(えみし)の長 阿弖流為(あてるい)」(20年3月)、「奥六郡主 安倍氏」(21年3月)と蝦夷の系譜をたどる書作展を開催しており、今回が第3弾となる。

 今回の書作展に向け、宗任と経清らの各種資料をひもといて現地を訪ね、思いを募らせてきたという佐藤さん。「自分の中で経清はヒーロー。不明な点が多く、幻の中にある存在というのもさらに魅力を感じる」という。経清に対して「陸奥話記」のエピソードを引用して「知将果断」(縦4・8メートル、横3・6メートル)を記し、宗任には「龍神」(縦4・3メートル、横2・4メートル)を書いた。

 このほか、2人に共通する「知」(縦1・8メートル、横1・9メートル)と「勇」(同)をはじめ、鳥海柵への自身のイメージを加えた「将軍聞名不見體、治外城柵」(縦1・4、横5・9メートル)と「鳥海」(縦1・8メートル、横3・7メートル)と「酒甑数十、幻和議宴」(縦1・4メートル、横4・8メートル)による一連の作品などに22年末から取り組んできたという。

 16日に会場で書き上げた作品は、今回最大の縦4・8メートル、横6メートル。「吾妻鏡」から藤原清衡が平泉に宿館を移す部分をイメージした作品。毛の長さ25センチ余りの筆を使い、濃いボンド墨で渾身(こんしん)の力を込めて仕上げた。

 佐藤さんは「蝦夷の系譜をたどる書作は、淡墨や青墨といったものでロマンチックな作品を書いてきた自分の書とは全く違う、ドラマチックな作品群を作り上げるもの」と話し、「最初は10月に盛岡市で阿部一族の滅びを表現する書作展で区切りを付けるつもりだったが、中尊寺創建の逸話を書きたい気持ちが募っている」とさらなる意欲を語っている。

 同展は31日までで、時間は午前9時~午後5時(最終日は3時)。火曜日休館。佐藤さんは会期中の木―日曜日に会場にいるという。

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