幻の酒「河東誉」復活 6日から販売 東和・猿舘酒店【花巻】
花巻市東和町土沢の猿舘酒店が、2022年から製造を進めていた日本酒「河東誉(かとうのほまれ)」が完成した。戦中まで同店で製造、販売されていた日本酒で、店主の猿舘祐子さん(64)が地元住民や県内の酒蔵の協力を得て復活させた。生酒を6日から限定100本で先行販売し、純米酒は5月上旬に販売する計画。猿舘さんは「多くの人の協力で完成することができた。猿舘酒店のプライベートブランド。多くの人に味わってほしい」と思いを込める。
同店は1935(昭和10)年に造り酒屋として創業。戦後に酒造業を廃業し、酒販売店となった。河東誉は40年代まで販売されていたとみられ、資料がほとんど残っていない幻の酒となっていた。
長年、河東誉の復活を思い描いていたという猿舘さんは、2020年から新型コロナウイルス感染拡大のため経営が危機的な状況となる中で、「逆に踏ん切りがついた」と22年から復活プロジェクトをスタートさせた。
猿舘さんの挑戦に同町の薄衣忠孝さん(70)も賛同し、所有する水田を貸した。減薬農法で「ひとめぼれ」を300キロ栽培し、原料として使用。加工には親交のあった酒蔵わしの尾(八幡平市)が協力した。
完成した生酒は、アルコール度数17度。精米歩合60%。コメの芳醇な香りと、ほのかな甘味が特徴となっている。猿舘さんは「さっぱりとした味わいで、コメの風味を感じることができる。冷やで飲んでもおいしい」と自信をのぞかせる。
ラベルの文字は東和町在住の書道家が執筆し、描かれている川は「河東誉の歴史」を表しているという。5日には関係者を招待して同店でお披露目会を開催する。
協力した薄衣さんは「酒米でなくてもおいしい酒を造れることが証明できた。この酒が米の消費拡大の新たな活路になる」と期待を寄せる。
猿舘さんは「わしの尾さんが要望を全て受け止めてくれた。地域の方にも支えていただき、感謝に尽きない。来年以降も製造して、地道ながら少しずつ活動を続けていきたい」と気持ちを新たにする。
限定生酒は容量720ミリリットル。価格は税込み2200円。問い合わせは同店=0198(42)2422=へ。