花巻

賢治の思い明かす 実弟の孫が逸話紹介 富士大公開授業【花巻】

富士大公開授業で、宮沢賢治の思想や作品などについて講話する宮澤さん

 富士大(岡田秀二学長)の2023年度公開授業「宮沢賢治から考える」は、花巻市下根子の同大で4月10日から7月10日までの全15回の日程で始まっている。5月1日に行われた4回目の授業は、賢治の弟・清六さんの孫で林風舎代表取締役の宮澤和樹さんが講師を務め、祖父から伝えられた賢治のさまざまなエピソードを紹介。聴講した学生や市民らは作品に込められた賢治の思いなどに理解を深めた。

 和樹さんは賢治没後90年に寄せて、「わたしの宮沢賢治~祖父・清六と『賢治さん』~」と題して講義。「雨ニモマケズ」について、「私も小中学生の頃授業で習ったが、すごく抵抗感があった」と明かす一方、「その後祖父から『これは作品ではなく自分自身に向けて書いたもの』と教えられた」と、その意味や背景を語った。

 賢治は26歳の時に二つ下の妹トシが結核で亡くなり、自身も37歳で同じ結核にかかり亡くなった。「雨ニモマケズ」は病臥した35歳の11月3日に手帳に書き留めたもの。当時、結核は不治の病とされ「自分はいつ死んでもおかしくない。しかし、こういう人間になりたかった」という祈りや願いが込められている。

 さらに、「雨ニモマケズの最後には南無妙法蓮華経が書かれているが、特に「行」の字を大事にしていた。『行ツテ』とは、実践すること、自分が進んで動くこと。『賢治さん』は、本当の幸せとは―の問いに答えはないが、さまざまなことを学びながら自分の感性を育てていかなければならないと考えたのではないか」と解説した。

 5日に全国公開される映画「銀河鉄道の父」にも触れ、「賢治が生前に出版したのは2冊だけ。しかも売れなかった。それが今では映画や音楽、絵画などで賢治作品を表現してくれる人が多くいる。これは祖父を中心として後世の人々が賢治作品を大切にし、世に出すことに努力した結果だろう」と語った。

 公開授業「宮沢賢治から考える」は15日以降、▽教育・科学・思想・宗教▽賢治の世界(作品)▽賢治とまちづくり―など多角的な観点から賢治について学ぶ。一般市民も聴講できる。

 問い合わせは同大総務・統括部=0198(23)6221=へ。

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