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市井見守る素朴な表情 岩手県立美術館企画展 北東北の民間仏130点

どこかおかしく穏やかな雰囲気を感じさせる黒石寺の十王像

 盛岡市本宮の県立美術館は、企画展「みちのく いとしい仏たち」(岩手日日新聞社など後援)を開催している。これまで顧みられなかった素朴でユニークな北東北の民間仏約130点を一堂に集め、厳しい風土に生きる人々の祈りや、優しくほっこりするような尊像の魅力を伝えている。21日まで。

 江戸時代、仏像造りの専門家ではない僧や大工らが刻んだ民間仏にスポットライトを当てた初の企画展。本県と青森、秋田両県から集めた134点の尊像を展示している。

 企画展は▽ホトケとカミ▽山と村のカミ▽笑みをたたえる▽いのりのかたち宝積寺六観音像▽ブイブイいわせる▽やさしくしかって▽大工右衛門四良▽かわいくてかなしくて―の全8章で構成。

 このうち「山と村のカミ」では、木っ端のようなものから本格的な神像に近いものまで、東北各地にさまざまな形で残る山神像に注目。中でも大きな頭部が目立つ兄川山神社(八幡平市)の山神像は、如来(にょらい)像と男神像が合体したユニークな姿の東北でも唯一の民間仏という。

 「笑みをたたえる」では、北東北の民間仏の特徴だという笑顔の仏像を取り上げた。中でも一関市にはニコニコした表情の観音菩薩(ぼさつ)像や聖徳太子像が数多く残っており、冷害など厳しい気候風土で暮らす人々が求める穏やかな生活への願いや祈りをうかがわせる。

 「やさしくしかって」では、亡者の罪過を裁く十王像の造形に着目。黒石寺(奥州市)の十王像は、質素な彩色で衣装を飾るカエデやイチョウが印象的で、どこかおかしな表情が優しく叱ってほしいという願いを写し出しているようだ。

 同館の吉田尊子学芸員は「東北には西日本などではあまり見られない笑顔で愛らしい民間仏が数多く残っており、造形の面白さが際立つ。厳しい風土の中で暮らす当時の人々が求めていた願いや祈りに思いをはせてみてほしい」と話している。

 時間は午前9時30分~午後6時(入館は5時30分まで)。月曜休館。問い合わせは同館=019(658)1715=へ。

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