奥州・金ケ崎

和歌から着想 新感覚梅酒 一関の酒店とタッグ 金ケ崎K.S.P

鳥海柵跡にちなんで歴史ロマンに満ちたリキュール「テントチニ」を完成させた今野代表(右)と老川代表

 「わが国の梅の花とは見たれども 大宮人は如何言うらん」。金ケ崎町の酒造会社と一関市の酒店がタッグを組み、歴史ロマンに満ちた薄紅色のリキュール「テントチニ」を完成させた。同町西根の国指定史跡・鳥海柵(とのみのさく)跡ゆかりの逸話に思いをはせ、米焼酎をベースに、現地で採れた梅と赤ジソなどを組み合わせた新感覚の味わい。5日に初回330本を発売する。

 同市旭町のリカーショップコンノの今野公英代表(56)の企画に、同跡地の一角に畑を持つ国産ハーブリキュール専門工場「金ケ崎薬草酒造」を運営しているK.S.Pの老川和磨代表(30)が応じて商品化。同町産の酒米・亀の尾を使った米焼酎をベースに、同跡地周辺で採れた梅の実と花、同酒造が有機栽培した赤ジソを使った。

 鳥海柵の最後の主だった安倍宗任は、前九年合戦で捕虜となって都に連行された。その際、蝦夷(えみし)は花の名前など知らないだろうと、手折った梅を見せてあざ笑う貴族に、和歌を詠んで応じることで一矢を報い、都人を驚かせたという逸話が残っている。この和歌がリキュール着想の元とも言え、裏ラベルに示して歴史ロマンへ誘っている。

 「梅をベースに今までになかった新しい酒にしたい。ただの梅酒では面白みに欠ける」と試行錯誤を重ね、田野畑村産の香木クロモジと盛岡市産の果実アロニアを加え、新しいタイプのリキュールに仕上げた。アルコール分は22%で、一般的な梅酒の12%前後と比べて強めになっている。

 今野代表が厚い信頼を寄せる若手酒造家として腕を振るった老川代表は「フローラルな香りが麹(こうじ)の香りとマッチし、アロニアも甘過ぎず、クロモジのスパイシーな余韻を楽しめるビターな味わい。ロックはもちろん、炭酸で割っても爽やかだ。梅をたっぷり使って酸味も利かせた。1本でカクテルのように楽しめる」と自信を見せた。

 今野代表は「50歳を過ぎてから歴史と地元学に興味を持ち、旧跡を巡るうちに、地元の酒屋として何ができるか考えるようになった。自分の役割は、何とか地域の歴史と酒をコラボして、いろんな歴史を次世代へつなぐことだ。酒と歴史は覚えるよりも感じること。鳥海柵跡は特別な地。地方の行政がここから始まった」と企画の意図について話した。

 同跡地周辺で採れる梅は小ぶりで香りが良いのが特徴。市場には出回らず、商品化は初めて。

 新商品のリキュールは1本500ミリリットル入りで、税込み3630円。リカーショップコンノだけで取り扱う。実店舗で販売するほか、ホームページでネット注文も受け付ける。

 問い合わせは同店=0191(23)3633=まで。

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