北上・西和賀

57人それぞれの賢治との対話 北上・詩歌文学館常設展 直筆作品、絵画やオブジェも

常設展「賢治に献ずる詩歌」の会場中央に展示されているギンドロの木をイメージしたインスタレーション

 北上市本石町の日本現代詩歌文学館(高野ムツオ館長)は、2023年度常設展「賢治に献ずる詩歌」を開いている。花巻市出身の童話作家で詩人の宮沢賢治をテーマに全国の詩歌人57人がつくった詩、短歌、俳句、川柳の直筆作品が展示され、会場は賢治と詩歌人たちの言葉のやりとりが聞こえてきそうな雰囲気を醸し出している。24年3月10日まで。

 同館では毎年テーマを定め、全国で活躍中の詩歌人による直筆作品を集め常設展を開いている。これまで天体(08年度)、鉄道(11年度)、震災(12~14、21年度)、まつりと詩歌(22年度)などをテーマに取り上げ、毎回大きな反響を呼んでいる。

 今回は、今年が賢治の没後90年にあたり、来年は生前唯一の詩集「春と修羅」刊行から100年となることから、詩歌人たちの作品を通して多様に浮かび上がる賢治の姿を共有しようと企画された。

 会場には「宮沢賢治あるいは『春と修羅』」を題材とした直筆作品57点と、絵画、オブジェ、写真など美術作品7点が展示され、出品者の朗読音声を聞くことができるコーナー、来場者参加型インスタレーション「かげとひかりの大樹」も設けられている。

 展示作品の中には賢治研究家としても知られ、今年1月25日に86歳で亡くなった詩人・天沢退二郎さんの評論草稿「賢治、ジャズ、そしてグラック」が含まれ、作品や作者のコメントなどが収められている図録(希望者に1000円で頒布)には舞踊家の勅使河原三郎さんのエッセー「遠くに春と修羅を臨む」も収録されている。

 インスタレーションは、賢治が好んだギンドロ(ウラジロハコヤナギ)の木をイメージしたもので、来場者は銀色の紙片に感じ取った思いなどを書いて枝に飾ることができる。子どもが一生懸命描いたイラストや「戦争が終わり平和な世界を」「この静かな空間で色々な作品を見て回り、不思議な気持ちに包まれました」などと記された“ギンドロの葉”があり、静かに揺れている。

 同館の濱田日向子さんは「詩歌人それぞれの中に賢治がいて、『春と修羅』という一つのテーマだけでいろんな作品が集まった。とても見応えのある展示になっている」と話している。

 時間は午前9時~午後5時。入場無料。

来月から短歌と俳句の入門講座

 日本現代詩歌文学館は、7~8月に短歌と俳句の入門講座を同館で開く。短歌や俳句の未経験者、初心者を対象に創作を楽しむ機会を提供し、愛好者の裾野拡大につなげる。

 短歌は7月8、22日、8月6日の全3回で、いずれも午前10時~正午。歌人の梶原さい子さんが基礎から分かりやすく解説する。梶原さんは「塔」選者で、2011年に現代短歌評論賞、15年に葛原妙子賞を受賞した。

 俳句は7月16、23、30日、8月6日の全4回。時間は3回目までが午後1時30分~4時、最終回は午後1~5時。基礎を学びながら句会形式で魅力に触れる。講師の白濱一羊さんは「樹氷」を主宰。県俳人協会長。07年に県芸術選奨に選ばれた。

 両講座とも定員20人、受講料2000円(学生、引率教員は無料)。問い合わせ、申し込みは同館=0197(65)1728=へ。

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