時を超え 縁共有 河野通信800年遠忌供養 県内外関係者しのぶ【北上】
時宗の開祖一遍上人の祖父で、源頼朝に仕えた武将河野通信(みちのぶ)の800年遠忌合同供養は27日、通信が葬られたとされる北上市稲瀬町水越にある県史跡下門岡ひじり塚で執り行われた。県内外から寺院関係者や一般参列者ら約40人が集まって通信を偲ぶ一方、時を超えてつながる不思議な縁を共有し合った。
通信は現在の愛媛県生まれ。源平合戦では源氏につき、海戦を得意とする平家に対し水軍を率いて軍功を挙げた。のちに承久の乱で鎌倉幕府に敗れて陸奥国江刺郡(現在の北上市)に流され、1223年5月19日に68歳で死亡した。
県内の時宗寺院は通信が没したとされる毎年5月に下門岡ひじり塚で法要を営んでいる。今年は、長徳寺(一関市藤沢町)住職で、藤勢寺(同)兼務住職を務める渋谷真之さんが「800年の遠忌に通信と岩手とのつながり、歴史を多くの人に感じてほしい」とバスツアーを企画。両寺院の檀家や一般市民ら約20人が参加した。
一行は、時宗7代の託阿(たくあ)上人が亡くなったとされる北上市藤沢の遊行上人堂を訪問。八重樫康伸別当から「今年は託阿上人の没後669年に当たる。堂は地域住民の協力で守られている」など当地の歴史について説明を受けた。
合同供養には通信の菩提寺である東禅寺(愛媛県今治市)の佐々木康祐住職らも参列。県内の時宗寺院住職が読経をあげる中、参列者一人ひとりが焼香し合掌して通信をしのんだ。
供養の後は、武楽(ぶがく)の創始家元で国際的に活躍している源光士郎さんが「義経 屋島の演武」を奉納。源さんは「いくらでもしっかりした能舞台はあるが、こうした歴史的な機会に墓所の前で舞うことができ、不思議なご縁を感じた」と語った。
初めて訪れたという佐々木住職は「通信はいわば罪人だが、地域の方々がずっと守ってくださった。長く伝え守り抜くことの大切さを実感した。とても良いお参りをさせてもらった。ぜひ愛媛にも足を運んでほしい」と語り、今後の交流にも期待していた。
渋谷住職は「私も驚くほど多くの方にご焼香いただいたが、通信公への何よりの供養になった。これも通信公のお導きがあってのこと。大変ありがたい」と話していた。
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