一関・平泉

一関時代の初期作公開 洋画家・福井良之助生誕100年 風景や教会題材 市博物館企画展

洋画家・福井良之助の生誕100年を記念し、一関時代の油彩画「みちのくの冬」などが公開されている企画展

 昭和期に活躍した一関市ゆかりの洋画家・福井良之助(1923~86年)の生誕100年を記念した企画展「生誕100年 福井良之助展」が、同市厳美町の市博物館で開かれている。福井が一関にいた頃の貴重な初期作品をはじめ、孔版画、油彩画の合わせて163点が前期(29日まで)と後期(11月1~26日)に分けて展示されている。

 前期は孔版画を中心に135点、後期は油彩画を中心に102点が公開される(一部作品は前・後期とも展示)。福井が20代の頃に図画教師として勤務した一関中学校で制作したとみられる油彩画やスケッチ、小さなテラコッタ人形、初めて手掛けたとされる孔版画など、これまでほとんど公開されたことのない作品も多数集められた。

 福井は東京で生まれ、太平洋戦争の影響で東京美術学校(現東京芸術大)を繰り上げ卒業した後、家族が疎開していた萩荘村(現一関市萩荘)に身を寄せて1944~52年の9年間、断続的に一関で暮らした。45、46年ごろの作品とされる「みちのくの冬」は、鍋倉山にあった家から見た風景を描いた油彩画で、雪に覆われた山々や田畑が落ち着いた色彩で表現され、福井の一関時代における代表作となっている。

 52年に上京した福井は、謄写版印刷による孔版画の制作を本格化させ、詩情豊かな作品を手掛けて国内外で評価を高めた。57年ごろに同市の日本基督教団一関教会を描いたとみられる孔版画は、窓の部分が大きくデフォルメされており、味わい深い風合いを醸し出している。

 65年ごろからは制作の軸を完全に油彩画へ移し、静物画や人物画などを発表。閑雅な作風で人気を博した。

 同展担当の大衡彩織副館長は、前期について「世界的に認められた孔版画が見られる。本当にすべて謄写版で作ったのかと思われるような繊細かつ重厚な画面作りに成功しているところが見どころ」と話している。

 11月3日は、午後3時から福井の作品を長年扱ってきた兒嶋画廊(東京都)の兒嶋俊郎さんの講演会「福井良之助―画家の中にある鎮魂とデカダンス」、4時20分からフリーアナウンサー河合純子さんと、よまえまカルテットによる「朗読と音楽の夕べ」、5時30分から兒嶋さんのスペシャルギャラリートークが開かれる。講演会、朗読と音楽の夕べは定員各100人で事前申し込みが必要。いずれも参加無料。問い合わせは同館=0191(29)3180=へ。

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