一関・平泉

老舗菓子店 年末閉店 室根名物「元祖白あんぱん」 千葉本店【一関】

千葉本店で客に商品を手渡す千葉店主。同店は年末で閉店する
創業150年 苦渋の決断

 お土産をはじめ地元の名物として広く親しまれている「元祖白あんぱん」を製造・販売してきた一関市室根町折壁の千葉本店が31日で閉店する。店を一人で切り盛りする4代目千葉利有店主(89)が高齢となり、悩み抜いた末に決断。1871(明治4)年創業からの歩みを思い、千葉店主は「『名物がなくなる』とお客さまに言われると痛切。申し訳ない」と語った。

 「元祖白あんぱん」は室根山の残雪の美しさをイメージし、白あんを白い生地で包んで焼き、表面には砂糖をちりばめている。

 千葉店主は宮城県気仙沼市出身で、実家は菓子店。菓子職人の修行時代に千葉本店の養子となり、店を継いだ。当時は近隣など数軒が白あんぱんを製造。千葉店主の実家も作っていたといい、流行していたとみられる。千葉本店では他の和菓子や洋菓子などを扱った時期もあったが、看板商品一本に絞った。今では室根で白あんぱんを売る唯一の店となっていた。

 千葉店主の一番の思い出は、1968年の第17回全国菓子大博覧会で金賞を受けたこと。喜久屋(一関市千厩町)の先輩職人から「ただ作って売るだけではだめ」と助言を受け、全国に売り出す思いで改良を重ねて受賞した。「県外からも注文が入るようになり、賞があったからこそ今がある。ありがたい助言だった」と振り返る。他の大会でも入賞し、一部作業を機械化し生産量を増やす、包装に凝ってお土産らしさを強めるなど、人気に応える工夫も取り入れてきた。

 事業承継を目指した時期もあったが、近年は千葉店主一人で製造から配達までをこなしていた。毎日早朝に起床しての立ち仕事。膝を痛めており、配達ルートの縮小など手を尽くした上で閉店を決めた。千葉店主は「店が150年を超えて続いたのは感慨深く、やめるのは嫌だったが、無理をして寝込んでしまっては何ともならない。先祖が作ってくれた商品で続けてこれた」と吐露した。

 22日に来店した同市室根町の女性(86)は「夫が大好きな菓子で、これから親戚にも送るところ。白あんぱんがなくなると室根が寂しくなる」と話していた。

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