野鳥観察小屋撤去 愛好者ら惜しむ声 北上・新堤
北上市は、同市相去町のハクチョウ飛来地・新堤の野鳥観察小屋とトイレを撤去した。老朽化を踏まえ、市の建築物最適化計画に基づき廃止を決めたが、愛好者からは「残念だ」などと惜しむ声も出ている。
小屋は1991年9月に着工し、92年3月に完成。新堤は県内有数のハクチョウ飛来地として親しまれ、多くの愛好者が風雨や冬の厳しい寒さ、夏の猛暑をしのぎハクチョウなど鳥類をゆっくり観察できる場として活用されてきた。
ただ、完成から30年近くが経過し徐々に老朽化。将来的な人口減少が見込まれる中、市は2050年までに市内の公共施設を延べ床面積ベースで3割削減する方針を示しており、小屋も廃止の対象に含まれていた。
さらに近年、県内各地でも鳥インフルエンザが発生しており、まん延防止の側面もあるとみられる。
小屋は11月から解体工事が始まり、12月に入り撤去された。日本野鳥の会北上支部の征矢和宣さん(77)=同市滑田=は「ここでは珍しいハクチョウが見つかっており、近年はひなも生まれて関東などからも見に来ていた。家族連れも訪れ、『ハクチョウのまち』として市のイメージアップにもつながっていたはずだ」とし「築30年の施設は他にもある。まだ使えるのにもったいない。周知や説明が十分にないまま壊すのは残念だ」と切に語る。
同様によく観察に訪れる日本白鳥の会理事の及川勇治さん(75)=金ケ崎町西根=は「県内のハクチョウ飛来地でも、建物がある場所はそうそうない。雪や風をしのぎ、中で会話したりじっくり見たりしている人もいて憩いの場だった。せっかくの建物だけに、残念で寂しい」と惜しむ。
市は今後も安全に見学できるよう跡地の周辺を舗装し、池との境目の柵を再整備する。商業観光課の千田里枝課長は「長く愛好者に利用されてきたが、老朽化もあり計画に基づき廃止させていただいた。舗装し柵を再整備するので、安全に見ていただければ」と理解を求めている。