北上・西和賀

歌人篠氏 多角的に 特別企画展開幕 詩歌文学館前館長追悼【北上】

日本現代詩歌文学館で始まった特別企画展。多数の資料で篠弘氏の業績を多角的に紹介している
テープカットで特別企画展の開幕を祝う関係者。中央が妻の篠智英子さん

 近代から現代までの短歌史を理論的に構築し、長く日本現代詩歌文学館の館長を務めた歌人・篠弘氏(1933~2022年)の業績と生涯を追う追悼特別企画展は16日、北上市本石町の同館で始まった。初日は関係者がテープカットを行い、開幕を祝った。

 「近代短歌史から現代短歌史へ―篠弘 あらゆる風に載りて種蒔(ま)く」と題した企画展は、篠家や同館が収蔵している書籍、原稿、色紙、写真、指輪やとんぼ玉などのコレクション、篠氏が手掛けた百科事典など300点以上を展示。歌人としての魅力や短歌史家としての功績のほか、多方面で活躍した篠氏の世界を浮き彫りにしている。

 オープニングセレモニーには妻の智英子さん、「まひる野」編集長の大下一真さん、公益財団法人一ツ橋綜合財団代表理事で小学館会長の相賀昌宏さんらが出席。智英子さんは「19年も館長をさせていただいたが、これも深い縁のおかげ。追悼展をこんなに立派にしていただき、主人も天国から喜んで見ていると思う」と話していた。

 篠氏は1933年東京都生まれ。早稲田大在学中に歌誌「まひる野」に入会。卒業後は小学館に入社し編集者として60年代の百科事典ブームをけん引した。近・現代短歌史に関する多くの著作があり、現代歌人協会理事長や愛知淑徳大教授を歴任したほか、詩歌人では初めて日本文藝家協会の理事長に就任。宮内庁御用掛として皇室への和歌指導も行った。

 実作面では職場での哀歓、苦悩、孤独といった人間関係の機微を歌い、新たな都会的詠風を確立した。第4歌集「至福の旅びと」で迢空賞、第5歌集「凱旋門」で詩歌文学館賞を受賞。2019年には第10歌集「司会者」を刊行した。

 01年から19年まで日本現代詩歌文学館館長を務め、実作講座などを通して短歌をはじめとする詩歌の普及活動に尽力。22年12月に89歳で亡くなった。

 同企画展は6月9日まで。時間は午前9時~午後5時。入場無料。3月の月曜のみ休館。問い合わせは同館=0197(65)1728=へ。

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