台風５号 本県横断　久慈などで記録的大雨　市民生活乱れる【岩手】

　台風５号は１２日午前８時半ごろに大船渡市付近に上陸し、本県を横断して午後は秋田県へ進んだ。夜には日本海側に抜ける見込み。この影響で、県内は強風や大雨により大荒れの天気となった。県などによると、岩泉町内３カ所で５世帯１３人が孤立したほか、同町と釜石市で住家４棟に床下浸水が発生、宮古市では建物の床上浸水が出ているもようで、花巻市東和町の空き家１棟で屋根がはがれる被害が見つかっている。ほかに道路の通行止めや鉄道の運休、空の便の欠航、停電などが発生し県民生活が大きく乱れた。【１５面に関連】

　降り始めから同日午後１時までの総雨量（盛岡地方気象台調べ）は、久慈市下戸鎖で４７５ミリと８月１カ月分の降水量の平年値の２・６倍、同市山形では２７９ミリで同１・６倍、大槌町では３００ミリで同１・７倍となるなど、各地で記録的な大雨となった。また、午後１時現在、大船渡市で最大瞬間風速２７・３メートルを記録した。

　県の午後３時現在のまとめによると、津軽石（宮古市、山田町）、関口（山田町）、小本（岩泉町）の３河川で氾濫危険水位を超えている。倒木や冠水、土砂崩れなどの影響で県管理道路は２０路線２２カ所で全面通行止めとなり、高速道では三陸道と釜石道の一部区間が通行止めとなった。

　ＪＲ盛岡支社によると、東北本線をはじめ大船渡、釜石、北上、山田、八戸の在来各線と秋田新幹線で運休が発生。区間含め１２１本が運休し乗客約７１００人に影響が出た。線路の安全点検のため、釜石線などでは１３日も運休が発生する予定。花巻空港発着便では、ＪＡＬが全便欠航、フジドリームエアラインズ（ＦＤＡ）も多くの便が欠航した。

　東北電力ネットワークによると１２日午後６時現在、久慈市約１４００戸、一関市約１０００戸、奥州市約３００戸など８市町で最大４２００戸余りが一時停電し、復旧に向けて作業を進めた。

　県によると、２３市町村が計２４万８２４６世帯、５４万５０１９人を対象に「緊急安全確保」「避難指示」「高齢者等避難」の情報を発出。２８市町村が２８７カ所の避難所を設置し、自主避難含め最大で１０９４世帯、２０８２人が避難した。

　記録的な大雨となった久慈市では、午前１０時半ごろから滝ダムの緊急放流を実施。下流の長内川が氾濫する恐れがあるとして同市は４１７７世帯、８３００人を対象に、５段階の警戒レベルが最も高い「緊急安全確保」を一時発令し、安全な場所への避難を呼び掛けた。

　県や同気象台は、引き続き大雨による土砂災害や、低い土地の浸水、河川の増水などに警戒するよう呼び掛けている。