一関・平泉

大船渡線と私 開業100周年プレ企画

 1955年4月から通学通勤で、陸中門崎駅から一ノ関駅を7年間利用したが、懐かしい魚行商のことが思い出される。

 朝の列車は4~5両編成で、気仙沼駅を午前5時40分ごろ発(た)ち、一ノ関駅に同7時30分ごろ着く。通勤通学者のほか気仙沼の魚行商の人たちが乗り、背負い籠は座席の下や通路に、軽い物は網棚に置く。混雑の中、にぎやかな商売談義など。気仙沼を発つと次々に下車し、家々を回って魚を売り歩いたのである。

 真滝や一ノ関で下車する人は、陸中松川駅から朝食を取り始めるので、門崎で乗車すると、食事のにおいが車内に漂っていた。

 両磐地方に魚屋は少なかったので、魚や海産物は行商に頼っていたし、欲しい魚類は注文したのである。また金銭も乏しい時代で、米や小豆などの物々交換にも応じてもらった。おかげで、弁当のおかずとなり、酒のさかなとなった。

 かなり多くの行商が両磐の個々の家庭に直接魚類供給した労苦に、今思うと感謝の念である。

(一関市関が丘・奈良井征德さん)


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企画/一関市観光協会、岩手日日新聞社

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