「現代の名工」 北上から2人
理容店・キャプテンバーバー店主で理容師の鈴木久明さん(70)=北上市花園町=と、アサヒテクノ代表取締役で建設・土木作業員の髙橋茂吉さん(70)=同市和賀町岩崎新田=が、2024年度卓越した技能者(現代の名工)に輝いた。長年の功績が認められ、2人は喜びをかみしめている。
「生涯現役」誓う理容師
青森県出身。東京都内の専門学校、短大で測量や土木を学び、上下水道の設計業務などに携わっていたが、北上市出身の妻の実家が理容店だったこともあり「理容師なら定年なく続けられる。老後のことも考えて、一生の仕事を見つけたい」と、28歳から都内の理容店で修業を始めた。1984年に理容美容の専門学校の通信課程を卒業。93年に北上へ移り住み、キャプテンバーバーを開業した。
東北理容競技大会ブローズカット部門などのヘアコンテストに出場し、優勝を飾った。先輩たちに追い付こうと、改善点などをノートに記しながら技術を磨いた。
難易度の高いブリックカットは「目線が近くなって切りやすくなる」と客のイスを倒して行う独自の技術。日本独自のアイロンパーマ技法を改良し、現代のヘアスタイリング剤にも対応できる元巻きアイロンパーマ技法を生み出した。
県理容生活衛生同業組合副理事長を務める。「あなたに切ってもらって良かったと言ってもらえた時がうれしい。理容師は天職。こんないい仕事はない」と誇りを持ち、「生涯現役」を誓っている。
「唯一無二」の工法確立
建設会社勤務時に磨いた独自の技術を武器に1998年、アサヒテクノを創設した。海川で真空技術を活用して地下水位を下げ、安全で環境面にも優れ低コストで施工する「スーパーウェルポイント工法」を確立し、信濃川のトンネル築造など大型工事で信頼性を実証。技術を応用しシンガポール、韓国、マレーシアなど海外軟弱地盤の改良工事でも実績を重ね、現地の開発を後押し。東日本大震災で岩手、宮城両県29カ所の復旧工事にも大きな役割を果たした。
「真空を使う」工法など誰も思い付かないことを実践し、「オンリーワン」にこだわってきた。「酒を飲み終えた夜11時にアイデアが出てくる。最初は誰も信じてくれない。もうけではなく、まずはトライすることが大事」と強調。数々の特許を取得し、従業員らと築いた「唯一無二」の技術は国内外で幅広く活用されている。
全国組織のスーパーウェルポイント協会を設立し、会長として国内外に惜しみなく技術を普及。「人や地球に優しい仕事を評価いただいた。周りのスタッフに恵まれ、協会員や関係者にも感謝したい」と語る。