渡り温泉(花巻)来月閉館 親会社が土地、建物売却 コロナ影響や人手不足
花巻市の宿泊業ファインリゾート(藤原敏博代表取締役)は、同市湯口の渡り温泉の営業を6月29日で終了すると発表した。花巻南温泉峡の一角としてホテルさつき、別邸楓を経営し、大勢の宿泊客や入浴客らに親しまれてきたが、親会社のMiK(本社青森市、村元裕代表取締役)が所有している土地、建物を別の企業へと売却する見通しとなったことから閉館となる。
渡り温泉は1990年に高弥建設が現在の別邸楓を建設して開業し、96年に5階建てのホテルさつきが営業を開始した。全56室のホテルさつきは、1階に飲食店、2階には宴会場やホールなどがあり、地下に大浴場や露天風呂などを備える。3階建てで全45室の別邸楓は、大浴場や露天風呂、小宴会場、エステサロンなどがあり、両施設とも県内外の観光客の宿泊や立ち寄り入浴、会合、北海道からの修学旅行などを数多く受け入れてきた。
2004年にMiK(旧北立地)が土地・建物を購入してホテル観光事業を開始。09年からファインリゾートが事業を引き継ぎ、10年代のピーク時は宿泊客だけで年間8万人が訪れるなどにぎわった。
年間売り上げも10億円を上回ったが、新型コロナウイルスの影響により業績が落ち込み、従業員の退職による人手不足が深刻化。以前の3分の1ほどの35人程度で営業を続けてきたものの、物価高騰も重なり、従前のサービスが提供できない状況になったという。
宿泊サービスは、来月28日のチェックインで終了。立ち寄り入浴は同23日が最終営業日で、入浴回数券の使用も同日までとなる。
ファインリゾートの小山達也執行役員総務部長は「自分たちにとっても突然のことで、地域の方々、リピーターの皆さまには申し訳ない気持ち。6月29日までは、これまで通りに精いっぱいおもてなしさせていただく」としている。
従業員の処遇は今後調整を進める。ファインリゾートが経営するコンベンション施設・ブランニュー北上(北上市)は営業を継続し、本社機能を同施設に移す。