クマに襲われ女性死亡　市が危機対策本部設置　北上・和賀

　４日午前７時３８分ごろ、北上市和賀町山口地内の住宅で、この家に住む女性（８１）が血まみれになって倒れていると、息子から１１０番通報があった。女性は住宅に侵入したクマに襲われたとみられ、その場で死亡が確認された。市内でのクマによる人的被害は今年初。山口地内では６月から建物内にクマが侵入する被害が多発しており、市は危機対策本部を設置した。

　現場はＪＲ北上線横川目駅から南方約９００メートルの住宅が点在する田園地域。北上署などによると、女性は１人暮らしで、自宅は平屋建て。息子が訪問した際、居間で女性の遺体を発見した。遺体には全身に爪による傷やかまれた痕があり、室内には獣毛が散乱し、複数の足跡があった。

　女性方では室内に風を入れるために玄関を開けていたといい、クマは玄関から侵入したとみられる。女性は２日午後に帰宅したところを目撃されており、２日夜から４日早朝の間に襲われたとみられている。

　クマは現在も捕獲されておらず、同署では詳しい経緯を調べているほか、パトロール活動を強化し、住民への注意喚起を行った。

　危機対策本部では、市鳥獣被害対策実施隊などが現場付近にわなを設置。同日午後１時に和賀、岩崎両地区交流センターと和賀町総合福祉センターに自主避難所を開設した。閉鎖時期は７日の同本部会議で判断する。

　同署や同本部では住民たちに不要不急の外出を控えるほか、窓や扉の施錠を徹底し、餌となる生ごみなどを屋外に放置しないよう呼び掛けている。

　北上市和賀町山口地内で女性がクマに襲われて死亡する人身被害が発生し、地域に不安が広がった。クマが周辺に潜んでいる恐れもあり、住民からは捕獲を望む切実な思いが聞かれた。

　市によると、２０１８年以降に市内でクマによる死者は確認されていない。女性宅の近くに住む７０代男性は「家の中に入ってきたクマに襲われて死ぬなんて聞いたことがない」と驚いた様子で、「目撃が多く、戸締まりはしっかりするようにしているが、薄いガラス窓などは破壊して入ってくるとも聞いた。不安だ」と危機感を募らせた。

　山口地内の世帯数は１５５世帯。北上署によると、同地内では６月３日から７月４日までに、小屋内に置かれていたコメを食い荒らされるなど、クマが建物内に侵入する被害が１０件発生している。

　同市和賀町在住の３０代女性は「建物に入ってくることを恐れないクマがいるなんて本当に怖い。早く捕獲するか、駆除してもらいたい」と願っていた。

（６月３日～７月４日）
▽６月３日＝午後３時４０分、車庫に侵入
▽２６日＝午後３時、民家敷地にある温室内に侵入
▽３０日＝午前６時２０分、小屋に侵入
▽同日＝午後６時１５分、コメのある小屋に侵入
▽７月１日＝午前９時３０分、小屋内のコメを食い荒らす。同じ小屋に午後６時４０分にも出没
▽２日＝午前４時、小屋に侵入し、コメを食い荒らす
▽３日＝午前７時と午前１０時５０分に同じ民家に侵入
▽４日＝自宅内でクマに襲われ、死亡している女性を発見