奔走!リクエスト取材班

部活動、どうあるべきか(上)

中学校、高校生活で大きなウエートを占める部活動(写真は本文の内容とは関係ありません)

 本紙読者から「部活動の在り方に疑問を持っている。調査してほしい」と依頼が届いた。内容は「学校が定めた休養日でも練習している。練習時間も長過ぎるのではないか」「部活動ではなく校外活動を優先させたい生徒への配慮が見られない」「部活動への入部が強制的である」という3点だ。

 記者は中学、高校時代、比較的熱心に部活動に取り組んできた。当時は部活動に加入することに何も疑問を持たなかった。しかし、それは何十年も前の話。寄せられた疑問を見た時に、巷で飛び交う「ブラック部活動」という言葉が頭に浮かんだ。時代は移り、変革の時期であることは容易に想像できる。今の部活動の状況はどうなっているか調査を進めた。

 本題に入る前に、まずは寄せられた疑問の背景を整理したい。中学校、高校で盛んに行われている部活動(今回は運動部に限って話を進める)だが、近年はけがのリスクを抑えるため、また教員の働き方改革などを念頭に、休養日を定めるなど活動をセーブする動きが広がっている。加えて、文部科学省の外局であるスポーツ庁が2018年3月に「運動部活動の在り方に関する総合的なガイドライン」を打ち出した。この中では、スポーツ科学の研究などに基づき活動時間は〝平日2時間程度、休日は3時間程度〟と上限を設けたり、校外での活動を望む生徒に配慮したりすることなどが記されている。これは過熱する部活動に一定の歯止めを掛けようとする意味合いもある。都道府県および市町村の教育委員会はこのガイドラインに基づき、それぞれにおいて「部活動の在り方に関する方針」を策定し運用を始めている。

 しかし依頼者である一関市在住の男性(50代)は、自分の子どもの現状や知人の体験から、「策定された方針が現場では徹底されていない、むしろ何ら変化が無いのではないか」と感じているという。

長過ぎる練習時間 苦悩する保護者

 中学生の息子が入った部の練習が長時間におよび、また休みが少ないことに苦労をしていたという女性(奥州市、30代)に話を聞くことができた。

 息子は中学校入学と同時に希望する球技の部活動に入部したが、それは子どもにとっても親にとっても過酷とも言える日々の始まりだった。部の練習は「とにかく厳しいというか、まず休みの日が無い」という。その部は学校で行われる数時間の活動を終えると今度は場所を移し、父母会またはスポーツ少年団の活動という名目のもと夜間の練習が行われ、終わるのは夜9時。学校が設定した休養日も関係なく、平日は連日練習をして、土日は大会や練習試合に充てられる。しかも土日は朝から夕方まで親子ともどもみっちり拘束される。記者が「たまには練習を休んでもいいんじゃないですか」と問いかけると、女性は顔をしかめた。外部コーチの「練習に来ないとレギュラーにはさせない」という言葉があり、練習は休みづらい雰囲気であったという。その一方で、試合に出るメンバーは固定化され、ほとんど実戦の機会は得られなかった。結局息子は、やりたかった競技をあきらめて別の部に移ることを決断した。

 果たしてそうした長時間の練習は本当に行われているのだろうか―。記者はある情報をもとに、女性が住む地区とは別地区にある市営の体育施設に向かった。平日の午後8時半頃、辺りは真っ暗だが体育館の明かりが付いている。廊下には近隣の中学校名の入ったバッグが置かれていて、フロアでは同校のジャージを着た10数人の生徒たちが練習に打ち込んでいた。案内板を見ると、地元クラブチームの名義で午後7時から2時間、会場を借りていることがわかった。時計の針が午後9時をゆうに回ると、練習を終えた生徒たちが保護者とともに暗闇の中、帰途に就いた。この練習が夕方の学校部活動の延長上なのかは定かではないが、いずれ夜遅くまでの練習は次の日に影響を及ぼさないか心配になった。もし学校で練習をした後での活動なのであれば、国や県が定めた「平日は2時間程度」とする練習時間を明らかに超過していることになる。

▲部活動の延長上で長時間の練習が行われているのだろうか
▲「中学生で頑張り過ぎるとあまり伸びない傾向がある」と話す清水教授
長時間練習で高まるけがのリスク

 こうした状況を鑑みてスポーツ科学の見地から警鐘を鳴らす専門家がいる。日本陸上競技連盟強化委員会オリンピック強化スタッフも務める岩手大教育学部の清水茂幸教授だ。清水教授は「中学生などのジュニア期は、発育、発達の途上なので長時間の練習は望ましくない」と語気を強める。さらに「長時間や負荷の高いトレーニングなどは短期間で成果をもたらす事もあるが、将来的に故障してしまうリスクが高まる」と指摘する。その上で、顧問教諭、外部コーチを問わず、子どもたちの育成に携わる指導者が正しい認識を持つことの必要性を訴え、「子どもたちを勝たせたい、成功体験を与えたい、そういう親心みたいなものは分かる。しかし、やはり勝ち負けは二の次、三の次。子どもたちが、高校、大学、社会人など次の段階に進んでも伸び伸びと競技を楽しむことができるようになること、また、その先で結果を出させるような育成ができる人こそ、本当に素晴らしいコーチなのではないか」と語る。

 ある市の教育委員会では、学校が関与する部活動で練習オーバーになっているケースは見られないとしているが、競技によっては夜遅くまで中学生が練習をしている現状はあるようだ。実際、保護者が主体となって組織する団体が練習機会を設けると、教育委員会の目は届きにくくなる。各教育委員会の「部活動の在り方に関する方針」そのものは、父母会などによる練習まで含めて活動時間を定めようとするものだが、方針自体には拘束力が無く、行政はあくまで「お願い」という立場を取らざるを得ないのが実情だ。

 もちろん競技力向上を追求する人たちからは、練習時間に上限を持たせることに反対する向きもある。しかしながら、同方針は、多くの専門家が携わり様々な研究結果に基づいて決められたものだ。スポーツの楽しさや勝利の喜びを知るはずが、行き過ぎた練習により競技そのものを断念しなければならないことになれば、本末転倒といえる。競技に熱中する生徒はいくらでも練習したいかも知れないが、やはりそこは指導者や保護者がスポーツに関する知識をより深め、計画性や安全性に十分配慮した練習の機会を用意するべきではないだろうか。

momottoメモ

部活動、どうあるべきか

(上)長過ぎる練習時間 苦悩する保護者

(中)部活動とは違う環境で頑張りたい、でも…

(下)部活動への加入は絶対?求められる在り方とは

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