2025年9月17日
「いく山河越えさり行かば寂しさのはてなむ国ぞ今日も旅ゆく」。旅と自然、酒を愛した歌人若山牧水の代表作の一つ。どこまで行けば寂しさの尽きる国にたどり着けるのだろうかと、自身の満たされない心情を詠んだとされる
▼平易で親しみやすい歌風から国民的歌人と呼ばれた。明治、大正、昭和と活躍し、今年が生誕140年。出身地の宮崎県の日向市、親戚がいて青春時代を過ごした延岡市では、生誕祭や講演会など記念事業が盛ん
▼恒例企画も多く、延岡市が作品募集中の青春短歌大賞は26回目。前回大賞の一つ「玄関に並んだ靴の大きさが母に追いつく小五の春に」(小学5年)、以前の「授業中ぼーっとしているあの人をぼーと見ているあいつが気になる」(高校2年)など力作がそろう
▼青春短歌とはいえ誰でも応募でき、近年は小学生から100歳代まで2万首余りが寄せられる人気のコンテスト。きょうが命日の牧水は43年の生涯で約9000首の秀歌を残したという
▼石川啄木とは互いの才能を認め合った友人同士で、結核のため26歳で亡くなった若き歌人の最期を枕元で見届けた。啄木の故郷盛岡市の中津川沿いに啄木、牧水それぞれの作品を刻んだ「友情の歌碑」が建つ。短歌を通じて結ばれた二人の固い絆に思いをはせる。