日日草

2025年11月25日

 子どもの頃からさまざまな漫画に夢中になってきた。一番最初に触れたのは家にあったサザエさん。その後も手塚治虫や藤子不二雄作品を愛読し、キン肉マンやキャプテン翼などが掲載された少年ジャンプも毎週欠かさず読んだ

▼その中で、異色のテーマで描かれた作品にはまった。「沈黙の艦隊」。冷戦末期、日米が共同で極秘裏に原子力潜水艦を建造して米海軍所属となったが、その後に乗組員が反乱を起こし、独立国やまとを名乗って深海に逃亡するというストーリー

▼原潜の優れた性能を知り、核兵器の脅威を改めて考えさせられるきっかけとなったが、世界各国を巻き込んだ政治劇も見どころだった。大沢たかおさん主演のドラマも視聴したが、海戦や国家間交渉など漫画と同様臨場感にあふれていた

▼さて、連載から30年を過ぎた今、原潜保有の議論が始まろうとしている。10月に自民党と日本維新の会は長射程ミサイルの垂直発射装置搭載潜水艦の保有を推進することで合意した。政府は海洋進出を強める中国などへの抑止力強化を強調している

▼沈黙の艦隊では世界政府設立も掲げられたが、現実社会はいまだ分断が続いている。非核三原則の解釈や立ち寄り先の住民の理解促進はどうなるか。原潜保有は漫画のようには進みそうにない。