2025年11月26日
一麹(こうじ)二酛(もと)三造り。ピンときた読者は左党に違いない。日本酒造りで要となる三つの工程。その知識と技を本県では南部杜氏(とうじ)が中心となりつないできた
▼「体と手を使う場面こそ減ったが工程は今も変わらない。酒を飲んだときに、仕事を感じてもらえたらうれしい」。以前、花巻市石鳥谷町の南部杜氏伝承館で当時の館長に勧められ短編映像を鑑賞した。機械化される前の酒造りの再現記録。文字通り汗水垂らしながら励む蔵人の姿に胸を熱くした
▼「伝統的酒造り」が国連教育科学文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産に登録されて間もなく1年。盛岡市の県立博物館は「いわての酒造り」と題したテーマ展を開催中。歴史、技術、文化などを紹介し、明治時代に書かれた「秘伝名酒造法」や今は無い酒蔵の資料、前述の映像も見ることができる
▼展示の終わりには県内杜氏の思いが並ぶ。「酒造りは忍耐と情熱の結晶」「やってみると世界が広がり、そんな仕事に誇りを持っている」「初めて日本酒を飲む方にも強い印象を残したい」。米価高騰、トランプ関税など取り巻く環境は厳しいが、杜氏たちの言葉は頼もしい
▼霜月も終わりが近づき日増しに寒さが際立ってきた。世界に認められた技に敬意を払いながら、かんをつけて一献といきたい。

