ソムリエ流 菜食健美

ゴボウは香りもごちそう

すり下ろしたゴボウを入れたみそ汁

 実りの秋が深まる10月は、食卓に根菜が豊富に並ぶ季節です。中でも「サトイモ」と「ゴボウ」は、この時期ならではのうま味を楽しめる代表格。どちらも昔から日本人の健康を支えてきた食材であり、秋の養生にぴったりです。

 サトイモは「ぬめり」に特徴があります。このぬめり成分は、ガラクタンやムチンと呼ばれる多糖類で、腸の働きを整えたり胃の粘膜を守ったりする作用が期待されます。またカリウムも豊富に含み、体内の余分な塩分を排出することで高血圧予防にもつながります。サトイモのほっくりとした食感は、体を温めたい秋の汁物にうってつけです。

 一方、ゴボウは食物繊維の宝庫です。特に水溶性食物繊維のイヌリンは、腸内環境を整え、血糖値の上昇を穏やかにする働きが知られています。さらに香り成分であるポリフェノール類には抗酸化作用があり、生活習慣病予防にも役立ちます。ゴボウの独特の風味は、料理に奥行きを与えながら体の調子も整えてくれます。

 今回は、この二つを組み合わせたみそ汁をご紹介します。作り方は簡単。ポイントは、ゴボウを最後に加えること。加熱し過ぎず、すり下ろした直後の香りが立ち上る瞬間を味わうのが狙いです。ゴボウの土の香りとみそのまろやかさが合わさり、サトイモの柔らかな舌ざわりが引き立ちます。

 忙しい日常の中で、旬の根菜を取り入れた一杯のみそ汁は、心と体をほっと温めてくれる存在です。古くから親しまれてきた食材の力を、季節の食卓にぜひ生かしてみてください。

 文・写真、野菜ソムリエ及川香(奥州市)


【ゴボウのみそ汁】

◆材料=ゴボウ15センチ、サトイモ2個、みそ大さじ2(みその塩分により加減してください)、ネギ適量、だし汁(煮干し3本、水2カップ、昆布5センチ)※昆布ははさみで細切りにする

◆作り方=➊昆布と煮干しを水に浸し、冷蔵庫で一晩置く➋サトイモは皮をむき一口大に切る➌鍋に①とサトイモを入れ、柔らかくなったら最後にゴボウを皮ごとすり下ろし加える。30秒ほどで火を止め、みそをとき入れる。ネギを散らしたら完成です。