バッタ追いし河川敷
たちまち十数メートルもの距離を飛び去るバッタに、関心の眼差(まなざ)しを送るばかり。それは、後ろ足の跳躍力と成虫だけが持つ羽の賜物(たまもの)だ。明るく乾燥した草むらを好むバッタにとって、河川敷は絶好の生息地。裸地混じりの荒れた場所でも、食草となるイネ科植物が自生していれば彼らの天下に。
河川敷の草むらに踏み入ると、驚いて飛び出したバッタが容易に見つかる。ところが、特に飛翔(ひしょう)能力の高い種類を捕まえようとすると困難を極める。ツノやキバなどの武器を持たない分、逃げ足に特化したのかもしれない。何とか撮影できたのは、体長3.5センチほどのマダラバッタの雌。バッタの雌は、雄よりも大きいため動きが鈍く、幾分か近づきやすいのだ。
海岸や造成地にも見られ、全国に広く分布するマダラバッタ。筆者にとって見慣れた種だが、跳躍して背面の状態から羽ばたき、方向転換するという、新たな気付きがあった。陽光が低く差し込んでなお、カメラ片手にバッタを追う勉学の秋。
(写真・文、久保川イーハトーブ自然再生研究所上席研究員・佐藤良平)
