里山スケッチ

育む手、田畑のかおり

稲を乾燥させるためのほんにょ作り。東北本線が通る

 いにしえ人は、「リッリッリッ」と鳴くツヅレサセコオロギの声を、「肩刺せ、すそ刺せ、つづれ刺せ」(冬に着る着物を繕って備えるように)と聞きなした。秋分を過ぎて寒露を迎え、越冬地を目指すマガンの群れが寒空を渡る。コオロギから衣替えの季節を教わり、マガンから冬が近づいていることを知った。

 栗駒山(須川岳)や焼石岳の頂が色づく頃、県南地域は稲刈りの真っ最中。今秋は台風が多く、田がぬかるんで作業は難航した。稲穂が寝そべってしまう前に刈り取りたいところ。農家同士の協力、結束により収穫が進む。雨上がりに懸かる虹へ、しばらく晴れてほしいと切なる願いが募った。

 雪解け後の田起こしから収穫まで、窓辺から、車窓から、県南地域ではなじみ深い田園風景。地域に住まい、その生業に少しでも携われば、作物を手塩にかける苦労と喜びを実感できる。ほぼ全ての食品の元は、自然と人が育て上げた命。「いただきます」の感謝の思いも深みを増すだろう。

(写真・文、久保川イーハトーブ自然再生研究所主任研究員・佐藤良平)