里山スケッチ

猊鼻の銀河鉄道

星空の下、第二砂鉄川橋梁を渡る大船渡線

 三日月は西の空低く、妖艶な微笑みを浮かべる。満ちゆく宵に答えるのは、さんざめく星々の声か。暖冬といえども東北の2月。日が沈むと一気に寒さが首をもたげ、たちまち身も心も征服される。かじかんだ手つきで三脚にカメラを据え付け。猊鼻(げいび)渓の下流側、砂鉄川と橋梁(きょうりょう)を画角に収めれば、シャッターを切る好機を待つばかり。

 冬期も観光客でにぎわう猊鼻渓さえ、夜の帳が下りれば物寂しい。片や、絶え間ない川音は静まることを知らず。不意に「グワーグワッグワッ」と叫ぶのはカルガモ。なぜ夜鳴きしたのか想像を膨らませると怪しさが面白さに変わる。むしろ人の気配に敏感となり、気分は猫やタヌキだ。

 午後8時すぎ、北斗七星が山影を抜けて北の空に勢ぞろい。運よく画角の外へ雲が流れ、大船渡線の一ノ関行き終電が砂鉄川を渡る。写す景色に寄せる思いと、行きつくまでのこぼれ話。少しでも多くの人に感動を伝え、それを分かち合う希望を詰めたシャッター。麗しくも冷たい星空と川筋に、温もりを求め。

(写真・文、久保川イーハトーブ自然再生研究所主任研究員・佐藤良平)