里山スケッチ

春を告げる花たち

ミスミソウの名は、三つの角を持つ葉の形に例えたもの

 季節の変わり目は、空が天気のあんばいを迷うのか。暖かく過ごしやすい陽気が一転して吹雪に。春分を過ぎてなお、県南の里山は冬を抜け出せないようだ。それでも、山野草の花と色彩はたすきをつなぐように移ろいでいく。

 早春は、フクジュソウの黄色い花。日が長くなるにつれ、ミスミソウやミズバショウなどの白い花が咲く。そして、春の盛りには桃色の花。ショウジョウバカマからサクラソウへと続く。身が震える寒さの中、咲き誇る花をめでて春の深まりを知れば、心が温まる。

 ミスミソウの花の見頃は3月下旬。背丈は10センチ程度で、緑の葉を絶やさず冬を越す。別名ユキワリソウとも呼ばれ、雪を割るように花を咲かせることが由来。その姿は、かれんでありながら強い生命力を感じさせる。

 積雪の少ない地域のミスミソウは、雪を割るというより、落ち葉をかき分けて花を咲かせている。自然環境の違いや変化は、生き物の暮らしのみならず、印象も大きく変えるのだ。

(写真・文、久保川イーハトーブ自然再生研究所主任研究員・佐藤良平)

momottoメモ

 木の枝に止まり柿の実をついばむ冬鳥、威嚇するかのようにはさみを広げるアメリカザリガニ、いつでも見られるはずなのに新鮮さを覚える田んぼの風景―。岩手日日で好評連載中の「里山スケッチ」ではこうした「一瞬のきらめき」を捉えた写真と文を交え、岩手県南を中心とした「田舎の自然」を紹介している。

 執筆、撮影しているのは東京都出身の佐藤良平さん。東京農大を卒業後、会社勤務を経て2011年4月に一関市へ移住した。普段は久保川イーハトーブ自然再生研究所(同市)の主任研究員として、同市萩荘地域の自然保護や調査などに取り組んでいる。15年5月の連載開始から3年半が経った今、佐藤さんに「里山」への思いを聞いた。【続きを読む】