里山スケッチ

翼なき跳躍

栗駒山の紅葉とハヤチネフキバッタの雌。体長は4㌢弱

 「まんず、きれいだ」「東北ならではの風景」。中には、「かわいらしい」との歓声が上がる。確かに、険しい山肌に根を宿す鮮やかな木々は、こんもりとしていて、いとしさにあふれている。みんなが待ちわびた栗駒山、紅葉の季節。山頂付近の色づきは、9月の終わりから10月の初めに最高潮を迎える。

 彼方の峰を目指して次の一歩に気を配ると、草間から跳ねる小さな影に目が留まった。東北地方の亜高山帯から高山帯に分布するハヤチネフキバッタが現れたのだ。その風貌は、ずんぐり、がっしりとしていて、他のバッタとは一線を画す。栗駒山では、湿原の周辺や草原にて出会える。本種を含むフキバッタの仲間は、羽が退化して飛べないものがほとんど。そのため、移動性が乏しい代わりに、特定の地域にのみ生息する固有種が豊富だ。

 行き過ぎる人を背に産卵するハヤチネフキバッタも。子孫のさらなる跳躍を夢見て一生を送るのか。登山の際は、ぜひ足元の世界にも注目したい。

(写真・文、久保川イーハトーブ自然再生研究所主任研究員・佐藤良平)