里山スケッチ

龍神穴滝に吹く風

龍神穴滝の水量が減る頃、岩手の梅雨は明ける

 夏の緑は、風か、滝か、それとも生命の息吹に揺らぐのか。ドドドドと勢いよく流れ落ちる水音が心にとどろき、真昼の熱気を押しのけて、湿り気を帯びた涼しさが身を清める。

 この龍神穴滝は、一関市厳美町の小猪岡川から磐井川へ注ぐ。幾年にもわたって、流水に浸食されている岩壁の立ち姿は、時と自然がなせる造形美。滝の名の通り、龍神が住まう窟(いわや)のような、神聖な雰囲気を醸し出している。

 太陽光と水蒸気を求め、垂れ下がるように枝を伸ばした木々。草木は、さまざまな方法で子孫を残そうと努めている。重力に任せて種子を落とすもの。風や動物に種子が運ばれるもの。果実が弾けて種子が飛び散るもの。種子は、できるだけ親の葉や幹の陰から離れ、日の当たる場所に根付いた方が育ちやすいのだ。

 滝壺へ崩れ落ちた巨岩に幼樹が根を宿す。朽ちて倒れた木も新たな芽生えの苗床となり、やがて生まれ変わる。悠久に、行雲流水のごとく続く生命の息吹を滝の流れに見た。

(写真・文、久保川イーハトーブ自然再生研究所主任研究員・佐藤良平)