里山スケッチ

百花、母なる焼石岳

湿原に広がるミズバショウの大群落=焼石岳、銀明水付近

 夕刻、濃霧が立ち込めるブナの森。歩みを止めれば木々の息遣いが聞こえてきそうだ。幻のような世界に浸って下山。焼石岳を後に、1日がかりの登山を回想した。

 6月中旬の早朝、中沼登山口から同山の頂を目指す。曇天、時折の日差し。麓の森はコルリやキビタキなどの夏鳥がすむ。渓谷に残雪。湿原ではリュウキンカやコバイケイソウが水の豊かさをうたう。大きな葉が茂るミズバショウは夏の様相。中腹の大雪渓周辺では、一変して春の様相。みずみずしい白の花畑が目を引く。山頂が近づくと、ハクサンイチゲの大群落が登山者の歓声を浴びる。岩場に咲くミヤマシオガマやミヤマキンバイは早池峰山でおなじみだ。

 長い道中、難所もあるが、その傍らにはいつも野草の姿。勇気をもらい、励まされ、カエルや鳥の声も新鮮に聞こえた。再び花をめでる時、きょう一日の出来事を思い出すだろう。時間をかけて、華やかさ、麗しさに触れ、焼石岳の懐の深さを知ることができた。

(写真・文、久保川イーハトーブ自然再生研究所常勤研究員・佐藤良平)