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東日本大震災7年 復興住宅 増える孤独死

2人が孤独死した仙台市内の災害公営住宅。70歳以上の単身高齢者が世帯の約半数を占めており、市の制度で高齢者や障害者が優先的に入居したとみられる=2月26日、同市宮城野区
累計97人、交流少なく 「茶話会」で触れ合いも

 東日本大震災と東京電力福島第1原発事故の被災者が入居する災害公営住宅(復興住宅)は、岩手、宮城、福島の3県で計画する約3万戸のうち9割が整備され、来年度中にほぼ全てが完成する見込みだ。一方、入居者の「孤独死」が増加。隣人の顔が見えづらい環境で、新たなコミュニティーをどう築くかが課題となっている。

 復興住宅の入居者は、3県とも65歳以上の高齢者が約4割を占め、県全体の高齢化率を上回る。多くは厚い壁で仕切られた集合住宅で、異変が起きても気付きにくい。3県などによると、「1人暮らしで、住宅で亡くなった状態で発見された人」は、2013年には岩手県の1人だけだったが、15年に3県で計14人、17年は同53人と急増。同年末までに累計で少なくとも97人が孤独死していた。

 仙台市宮城野区のある復興住宅は、14年に入居が始まり全28戸が埋まったが、その後4人が亡くなり、うち2人が孤独死だった。17年10月に死亡した60代の男性は10日ほど誰も気付かず、訪ねてきた友人が発見。住人らによると、津波で母親を失った男性は、自治会の清掃活動にも姿を見せず、他の住人との関わりも少なかったという。当時、町内会の区長だった松谷幸男さん(65)は「震災はまだ終わっていない。喜びの中入居したが、やりきれない怒りを感じる」と声を落とし、「被災者は、私も含め事情を抱えている。住人同士が関係を築くには時間が必要だ」と指摘する。

 自治体は、見守りの強化や自治会活動を支援する事業を行っているが、20年度末には「復興・創生期間」が終了し、国の交付金の先行きは不透明だ。こうした中、住人自ら交流機会を増やす試みを始めた所もある。

 15年9月に孤独死が起きたという宮城野区の別の復興住宅では、町内会長の川名清さん(69)が昨年から、70歳以上の単身高齢者を集めて茶話会を開いている。当初は乗り気でなかった人も、今では月1回の会を楽しみにしているという。川名さんは「顔を合わせる機会をつくれば元気かどうか分かる。住人同士で弱い人から支えていく」と手応えを感じている。【時事】

▲災害公営住宅で1人暮らしをする被災者の松谷幸男さん=2月26日、仙台市宮城野区

momottoメモ

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