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ブラックホール撮影成功 国立天文台など参加・国際共同研究

国際共同研究プロジェクト「イベント・ホライズン・テレスコープ(EHT)」は10日、世界各地の電波望遠鏡による観測で、史上初めてブラックホールの姿を撮影することに成功したと発表した。(EHTコラボレーション提供)
史上初、電波望遠鏡で観測

 国立天文台などが参加する日米欧などの国際共同研究プロジェクト「イベント・ホライズン・テレスコープ(EHT)」は10日、南米チリにあるアルマ望遠鏡など世界各地の電波望遠鏡による観測で、史上初めてブラックホールの姿を撮影することに成功したと発表した。あらゆるものをのみ込み、謎に包まれているブラックホールの解明に役立つと期待される。【4面に関連】

 ブラックホールの存在は、アインシュタインが約100年前に提唱した一般相対性理論から予言されていたが、その姿を初めて直接捉えた。今回の観測では理論を覆すような現象は確認されなかったという。

 記者会見したプロジェクトの本間希樹・国立天文台教授(国立天文台水沢VLBI観測所長)は「これが人類が初めて目にしたブラックホールの姿です」と述べ、黒い穴のようなものが写っている画像を公開した。

 ブラックホールは、強烈な重力により光すら抜け出すことができず、そのものの観測はできない。引き寄せられるガスなどの物質が周囲に作る「降着円盤」が放つX線などの観測が進められていたが、解像度や感度が足りず、ブラックホールの輪郭に迫る観測は成功していなかった。

 EHTは2017年4月、アルマ望遠鏡など世界8カ所の電波望遠鏡で、地球から約5500万光年離れた楕円(だえん)銀河M87の中心にある巨大ブラックホールなどを観測。地球から月面に置いたゴルフボールを識別できるほどの解像度で得られたデータの解析を進めた。

 約2年間の解析の結果、M87中心部で明るく光るガスのリングの中に、ブラックホールの姿が黒い穴のように写る画像が得られた。リングの大きさから、ブラックホールの質量は太陽の約65億倍と判明。黒い部分の中心に、ブラックホールの本体があるという。

 プロジェクトには、国立天文台のほか、東北大、広島大などの研究者が日本から参加している。

 ブラックホール 銀河の中心などに存在する極めて質量の大きな天体。アインシュタインが約100年前に提唱した一般相対性理論に基づき、存在が予言された。あまりに強い重力で光すら放出されないため直接観測ができず、ブラックホールの重力に引き寄せられるガスなどの物質が周囲に作る「降着円盤」や、物質がのみ込まれる際に放つX線などの観測による研究が進められてきた。地球が属する銀河系(天の川銀河)の中心部にも太陽の約360万倍の質量を持つ巨大ブラックホールがある。

 イベント・ホライズン・テレスコープ(EHT) 世界各地の電波望遠鏡をつなぎ、史上初となるブラックホールの撮影に成功した国際共同研究プロジェクト。南米・チリにある国立天文台のアルマ電波望遠鏡のほか、米アリゾナ州、ハワイ島、メキシコ、スペイン、南極の電波望遠鏡をVLBI(超長基線電波干渉法)という手法でつなぎ、直径1万キロの口径を持つ巨大電波望遠鏡を仮想的に形成。ハッブル宇宙望遠鏡の100倍以上に及ぶ超高解像度でブラックホール中心部を撮影した。

【時事】

momottoメモ

▲ブラックホールの研究成果について記者会見する国立天文台の本間希樹教授
▲銀河系研究の最前線解説 本間所長(国立天文台)=2016年7月

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