奥州・金ケ崎

定説覆すジェット確認 冷えたガスと共存 国立天文台研究チーム ブラックホール解明に新展開【奥州】

国立天文台などの研究チームによる研究を基にしたほうおう座銀河団の中心から噴き出すジェットの想像図(国立天文台提供)

 国立天文台などの研究者らによる国際研究チームは、ほうおう座銀河団の中心部分に誕生から間もないジェットを確認した。同天文台水沢VLBI観測所SKA1検討グループの赤堀卓也特任研究員(41)が主導し、同天文台が31日に発表した。銀河団ではジェットがガスの冷却を抑制すると考えられてきたが、同銀河団は中心部のガスが著しく冷えており、定説を覆してジェットと冷えたガスが共存する例を示した。銀河団や巨大ブラックホールなどの解明に新しい展開をもたらす発見となった。

 銀河団は数十~数千個の銀河の集まり。1000万度を超える高温のガスで満ち、このガスがやがて冷えて中心部の巨大銀河に引き寄せられ、大量の星を形成すると予想されている。一方、これまで観測された銀河団のほとんどは冷えていない。中心にある超大質量のブラックホールが物質を光速に近い勢いで噴き出すジェットにより、ガスが再度加熱され温度が均衡すると考えられてきた。

 ほうおう座銀河団は地球から約59億光年離れ、主に南の空に見える。銀河団の中では例外的に中心部のガスが冷えていることを研究チームのメンバーが以前に突き止めていた。

 研究ではオーストラリアの電波干渉計を使用し、同銀河団中心の巨大銀河から2対のジェットの電波放射を確認。このうち短い1対は形成から約100万年と、数十億年という銀河団の“年齢”に比べはるかに若く、周期的に噴き出ていることが示唆された。

 成果からは二つの可能性が読み取れ、同銀河団がジェットによる加熱の過程にあるか、これまで知られていない進化の道筋をたどっているとみられるという。

 赤堀特任研究員は同天文台三鷹キャンパスに勤務。研究成功のポイントには、比較的高い周波数での観測で高い解像度を得たこと、南半球での長時間の観測の2点を挙げた。水沢VLBI観測所がブラックホールなどに対し高い周波数でジェットを観測していたことに着想を得たほか、オーストラリアでの研究経験があったこともプラスになった。

 今後は2021年から建造が始まる予定の国際大型電波望遠鏡の活用も視野に、ジェットとガスが混ざる様子などを詳しく研究する方針。赤堀特任研究員は「水沢の研究でも、ブラックホールから出たジェットがどのように宇宙に影響を及ぼしていくかは大切なテーマ。研究の裾野が広がり、相互に連携できる内容となった」としている。


 ジェット 宇宙ジェットとも。磁場などの作用により、超大質量のブラックホールなどの天体から高エネルギーの粒子が噴き出す現象。噴出速度は光速に近くなる場合もある。

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