一関・平泉

“カリスマ店長”思い収録 「本屋と図書館の間にあるもの」 故伊藤さん(一関図書館前副館長)追悼集刊行

一関図書館前副館長の伊藤さんの追悼集「本屋と図書館の間にあるもの」。亡くなる2カ月前に行った対談などが収録されている

 書店勤務時に「カリスマ店長」と呼ばれ、2020年2月に急逝した一関市立一関図書館前副館長・伊藤清彦さん(同市東山町出身)の追悼集「本屋と図書館の間にあるもの」が刊行された。亡くなる約2カ月前に茨城県鹿嶋、長野県塩尻各市立図書館元館長の内野安彦さんと行った対談をはじめ、伊藤さんが執筆したエッセーや、共に働いた書店員や図書館職員が寄稿した追悼文を収録。書店と図書館の違いを踏まえながら、本をめぐる課題と展望が語られた一冊となっている。

 追悼集は▽対談「本屋と図書館の間にあるもの」▽新聞に掲載されたエッセー▽関係者の追悼文―の3部で構成。

 対談は内野さんが企画し、秋田県横手市立平鹿図書館司書の石川靖子さんが進行役を務め、19年12月9、10の両日に一関市民センターで行われた。書店や図書館の存在意義、市民が良書を読めるように店員や司書が果たすべき役割、出版流通業や行政の問題点などが、それぞれの経験に基づきながら指摘されている。

 図書館について伊藤さんは、非正規雇用の立場にある職員の活躍を挙げ、「図書館にしても本屋にしても経験・知識の蓄積量ですよ。人をないがしろにする仕組みはろくなものじゃありません」と人材育成の重要性を強調している。新築開館した一関図書館を含め市立図書館8館の閉架が満杯に近い状態にあるとも語り、「学校の統廃合が激しくて、まだ使えるような空き校舎がいっぱいあるんです。建築強度もあるし、どこかから本棚なり持ってきて、できないのかなということを考えています」と空き校舎を活用した図書館資料の保存を提言している。

 前書きで内野さんは、伊藤さんの訃報を受けた約2週間後に出版社から対談の反訳の一部が送られてきたと回顧。「あの2日間の至福の時間が蘇ってくる、ときに激しく、ときに優しい、どうしようもなく本が好きな伊藤さんの言霊が文字になっていました」と充実したひとときを振り返り、追悼集としての発刊に至った思いを明かしている。

 追悼文は、盛岡市のさわや書店で教えを受けた田口幹人さん、講演会や研修会で交流のあった前紫波町図書館長の工藤巧さん、一関市立大東、一関両図書館で共に勤務した伊藤和代さんが寄稿。思い出と共に人柄や功績をしのんでいる。

 A5判285ページ。税込み2420円。

 問い合わせは発行した郵研社=03(3584)0878=へ。

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