花巻

賢治賞に信時さん(甲南女子大文学部教授) イーハトーブ賞は毛利さん【花巻】

 花巻市は27日、第31回宮沢賢治賞・イーハトーブ賞の受賞者を発表した。優れた賢治の研究や評論、創作に贈られる宮沢賢治賞は、日本近代文学の研究者で甲南女子大文学部教授の信時哲郎さん(57)=神戸市=、その精神を実践する人に贈られるイーハトーブ賞は日本人初の宇宙飛行士で日本科学未来館名誉館長の毛利衛さん(73)=茨城県つくば市=に決定。イーハトーブ賞に準じる奨励賞には1団体を選んだ。

 両賞などは市が宮沢賢治学会イーハトーブセンター(岡村民夫代表理事)に選考を諮問し、その答申に基づき決定。学会員や有識者の推薦、選考委員会の推挙した宮沢賢治賞12件、イーハトーブ賞10件の中から同センターの賞選考委員会(委員長・大沢正善副代表理事)が選考した。

 賢治賞の信時さんは、賢治晩年の文語詩稿「五十篇」「一百篇」について1篇ごとに語注、評釈を施し、先行研究を記載した著書を刊行し基礎的研究の土台を築いた。2010年刊行の「宮沢賢治『文語詩稿五十篇』評釈」で同賞奨励賞を受賞。19年2月刊行の「宮沢賢治『文語詩稿一百篇』評釈」が今回の選考対象となり、奨励賞を励みに研鑚(けんさん)を積んだ約10年の成果が評価された。文語詩稿に関してはこれまで五十篇が定稿化された後に一百篇の定稿化が進められたと考えられてきたが、信時さんは同時並行的に進められた可能性を指摘、今後の研究にも一石を投じた。

 イーハトーブ賞の毛利さんは少年時代から賢治に触発され、2度にわたる宇宙でのミッション、深海や南極昭和基地での科学実験の体験から新しいものの見方・考え方「ユニバーソロジ」を提唱、21年1月刊行の著書「わたしの宮沢賢治」で宇宙観と地球観を統合する「地球まほろば」の思想へと発展させた。最初の宇宙飛行では賢治の「生徒諸君に寄せる」を書き込んだ手帳を持ち込み繰り返し読んでいたといった軌跡も記され、16年には同市の賢治祭で講演するなど賢治に寄せる思いが認められた。

 同賞奨励賞には、東京都を拠点に活動するものがたりグループ☆ポランの会(彩木香里代表)を選んだ。一人語りを中心に賢治の童話作品を原文に忠実に物語る公演を続け、動画配信サイトでも発信。今年3月には「春と修羅」全詩の朗読をCD6枚にまとめるなど多様な媒体で賢治作品を広く紹介している。

 このほか、同センターが賢治の人と作品や精神の普及、研究の推進に寄与する活動を行う個人・団体などに贈る功労賞は、賢治に関わるSPレコードの復刻録音をCD5枚に収録、未詳だった楽曲のモデルを発掘し、ブログで賢治が愛好した音楽を紹介する仙台市の元ジャズバー経営者佐々木孝夫さんに贈られる。

 贈呈式の開催は後日予定している。

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