一関・平泉

ロボアームで調合成功 可搬型、費用大幅減 一関高専学生 産学連携で開発 放射性医薬品

可搬型の放射性医薬品自動調製システム(手前)を開発し、実証実験に成功した一関高専の(左から)上野さん、八重樫さん、菊池さん、佐賀さん

 一関工業高等専門学校(荒木信夫校長)の学生が大学や研究機関、民間企業などとの連携で開発した可搬型ロボットによる「放射性医薬品の自動調製システム」が、ロボットアームで世界初の放射性医薬品調合実証実験に成功した。同システムは同様の機能を持つ従来のシステムより安価で持ち運び容易なのが特徴で、抗がん剤などの放射性医薬品や診断薬を調合する際の被ばくリスク解消はもとより、ウイルスや感染性の高い検体の取り扱いなどにも活用できると関係者の注目を集めている。

 システムを開発したのは、同高専未来創造工学科5年の上野裕太郎さん(19)、八重樫温人さん(19)、菊池華央さん(19)、佐賀駿磨さん(19)の4人。11日には一関市萩荘の同高専でシステムのデモンストレーションと、開発までの経緯の発表が行われた。

 同システムの開発は、2021年8月に東北ライフサイエンス・インストルメンツ・クラスター(TOLIC、小山康文会長、盛岡市)が開いたインターンシップで取り組んだ「遠隔ラボ支援システム」の構築がきっかけ。引き続き同高専の課題解決型地域インターンシップで産学連携により開発が進められてきた。

 京都薬科大(京都市山科区)、産業技術総合研究所(本部東京都千代田区)のほか、TOLIC会員企業とのアイエスエス(本社盛岡市、ソフトウエア開発)、アイカムス・ラボ(同、マイクロメカニズム製造開発)の連携で開発したシステムは、市販の小型汎用(はんよう)ロボットアーム2台やTOLIC会員企業の製品、学生が3Dプリンターで製作した機材を使うことで、従来システムよりコストを100分の1にまで削減。3月には同大付属施設の放射性同位元素研究センターで同高専の学生や教員も参加し実証実験を行い、放射性医薬品の調合に成功した。

 学生4人からは、医薬品調製者の被ばく防護や薬剤を安価に製造・提供するため、遠隔操作による装置が必要とのニーズに応えるべく開発を進めてきた経緯を説明。リーダーの上野さんは「現状で満足せず、常に精度を向上させるために検討を続けるという理念で研究に取り組んできた。今回のテーマは達成できたが、多角的な視点でさらに改良を行い、最終目標である安価なアームロボットを用いた自動実験システム実用化達成のため、今後も開発を継続していく」と語った。

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