一関・平泉

駆除シカ 革製品に 益金で鹿踊り継承支援 京屋染物店がCF【一関】

シカの革で作られた手提げかばんを持つ蜂谷専務(右)と革を手にする山田さん。山ノ頂プロジェクトで伝統芸能継承にもつなげていく

 一関市大手町の京屋染物店(蜂谷悠介代表取締役)は、駆除されたシカの皮を活用して革製品を作り、郷土芸能の鹿(しし)踊り継承につなげる「山ノ頂(やまのいただき)」プロジェクトを開始した。害獣として駆除されたシカの命を価値あるものに変えようと企画。クラウドファンディング(CF)で賛同者を募り、返礼品として革製品を届けている。益金の一部は伝統芸能の鹿踊り継承のための資金に使用。今後は製品の一般販売も視野に入れており、自然への感謝を込めながら伝統芸能継承を図っていく。

 同店は鹿踊りなど郷土芸能の衣装製作も手掛けており、蜂谷淳平専務取締役をはじめ社員も同市舞川の行山流舞川鹿子躍(ししおどり)保存会の一員として活動している。一方、県内では鹿踊りの由来にもなっているシカの食害が広がっており、2020年度には1万9800頭ほどが駆除されたが、ほとんどは利活用されることなく焼却か埋却により処分されている。そこで、害獣として駆除されるシカの命を価値に変え、さらに郷土芸能の継承にもつなげることはできないかと考え、今回のプロジェクト企画に至った。

 具体的には、遠野市で地元の猟友会が駆除したシカの皮を活用して革を制作している山田泰平さんに依頼。山田さんから提供を受けシカの革を使い製品を作ることとした。シカの革は「革のカシミア」とも称され、柔らかくて手になじみやすく伸縮性に富んでいるのが特徴。当初はアウトドアグッズなどを模索したが、「日常使いできるように」と、またぎが火薬入れに使う火口(ほぐち)入れと手提げかばん、小物入れの3種類とした。

 CFは5月25日に開始。8時間ほどで目標としていた100万円を突破し、今月14日午後5時現在で405万円に達している。CFは26日までで、50頭分ほどの革を返礼品に活用する予定。今秋からは一般向けの販売も行う意向で、売り上げの3%は鹿踊りの継承、保存に活用していく。

 製品のバリエーションも増やしていく方針で、蜂谷専務は「岩手の人は自然と共に生きるということを大事にしてきており、次の世代にも届けていくためのプロジェクト。飾らずに暮らしの中で使ってもらうことで、山や自然を身近に感じてもらうことがこの製品の価値で、緩やかに広がってほしい」と語っている。

 ◆山ノ頂プロジェクトCFのリンク 

 

地域の記事をもっと読む

一関・平泉
2024年4月26日付
一関・平泉
2024年4月26日付
一関・平泉
2024年4月26日付
一関・平泉
2024年4月26日付