北上・西和賀

つなぐ鉄路 北上線全線開通100周年(中)

ほっとゆだ駅を利用する西和賀高の生徒。同校では生徒の6割が列車通学をしている
西和賀に欠かせぬ足
町と高校生 存続訴え

 西和賀町にはJR北上線のゆだ錦秋湖、ほっとゆだ、ゆだ高原の3駅があり、町民の貴重な足として利用されてきた。県立西和賀高校(助川剛栄校長、生徒105人)の生徒たちの通学を支える路線としての役割も大きく、町と同校は路線存続に向け声を上げ続けている。

 西和賀高の2024年度入試の志願倍率は1・23倍を記録。来年度からは募集定員を2学級80人に増やす方針が県教委から示された。生徒の7割以上は町外出身で、全校の6割が北上線を利用。北上線が廃線になると生徒の通学手段がなくなり、生徒確保が困難を極めるのは明白だ。

 6月に町役場湯田庁舎で開かれた平和街道サミットで、内記和彦町長は「生徒は北上線最大のヘビーユーザー。朝夕にほっとゆだ駅には多くの生徒が集まり、町民の励みになっている」と強調。町では北上市、秋田県横手市と連携して協議を重ね、利用促進や存続に向けた協議を続け、事業を展開してきた。

 生徒たちは北上線存続を重要な地域課題として捉え、文化祭で発表するなど自分ごととして取り組んでいる。

 通学生の中には日ごろの感謝を込め、自発的に駅周辺の清掃を続ける生徒もいる。

 横手市から通う高橋なびらさん(2年)は、朝にほっとゆだ駅周辺や近くの足湯のごみ拾いを1年生の時から続けている。清掃はスクールバス到着までの15分間。徐々に町民が声を掛けてくれるようになり、「掃除から知り合いになった住民の人もいるし、ジュースをくれる人もいる」とほほ笑む。「乗務員さん、ほっとゆだ駅の駅員さんもフレンドリーで、楽しく通学できている」と学校生活だけでなく、北上線を通した交流も青春の一ページになっているようだ。

 北上市から通学する伊藤煌さん(2年)は、総合的な探究の時間で北上線の利用促進をテーマに研究を進めている。鉄道ファンであり、北上線は一番のお気に入り。10月に北上駅東口で開かれた100周年記念イベントにトークショーのゲストとして招かれ、学びの成果と豊富な知識を披露し、来場者を驚かせた。

 伊藤さんは「赤字路線だから簡単に廃止すべきという声もあるが、路線を使って生活している人たちのことを全く考えていない」と憤る。学ぶほどに北上線への愛着が深まり、「100年も続いてきた歴史を簡単に終わらせてはいけない」と思いを強くする。

momottoメモ

つなぐ鉄路 北上線全線開通100周年

北上市と西和賀町、秋田県横手市をつなぐJR北上線は15日、全線開通100周年を迎えた。奥羽山脈をまたぎ岩手、秋田両県を結ぶ移動手段として物流、観光など地域経済を支え、重要な役割を果たしてきた。地域をけん引した同線の1世紀を振り返り、課題となっている利用促進策について考える。(3回続き)

(上)人と物 流れる動脈 鉱山が敷設の原動力に
(中)西和賀に欠かせぬ足 町と高校生 存続訴え
(下)「マイレール意識」が鍵 住民に積極利用の動き

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