一関・平泉

惜しまれ幕引き 伝統の味と技、後継者へ 深萱の昔とうふ工房 藤沢【一関】

味を後継者に託し、13日に製造を終える「深萱の昔とうふ工房」代表の皆川さん
営業あすまで

 一関市藤沢町の「深萱の昔とうふ工房」は、13日の製造を最後に営業を終了する。焼き豆腐にぴったりの硬さが人気で、残念がるファンも多い。伝統の味と技法は、町内の女性(44)が引き継ぐ。

 同工房は昔ながらの技法で、味が濃くしっかりした豆腐を製造、販売してきた。もともとこの地域で作っていた女性から代表の皆川洋一さん(69)が作り方を教わり工房を設け、1989年7月に製造を始めた。

 きっかけは、その1年前に東京で開かれたフェアへの出品。東京進出を勧められたが女性が固辞したことから、橋渡し役を務めた皆川さんが製造と販売を担うことにした。

 農家の自家製だった豆腐の東京での販売は注目を集め、皆川さんは「当時はバブル。物産展では行列ができ、面白いほど売れて、工房も忙しかった」と懐かしむ。

 2017年8月に工房を手伝っていた女性が退職。その時点で工房を閉めることも考えたが、注文が入っていたことから週に1度の製造を続けてきた。

 しかし、従業員を確保できず、自身の健康も考え、昔とうふを製造する後継者が現れたことを機に自らは製造と販売から手を引くことを決めたという。

 「毎月東京に通ったし、北は札幌、南は大阪まで営業で各地を歩いた。珍しがられて、講演も頼まれるようにもなった。つらいことも、いいこともある悲喜こもごもだった」と振り返る。

 工房の終了をインターネット交流サイト(SNS)などで発信したところ、「残念」「ご苦労さま」と反響が大きく、皆川さんは驚きながら「長い間ありがとうございます」と感謝する。

 後継者となる女性は、皆川さんの指導を受け製造方法を習得。今月中に工房を立ち上げて、「昔とうふ」の新しいスタートを切る。

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