県内外

祈りのうた いわての震災詠 東日本大震災から14年

 東日本大震災以降、3月は祈りの季節となった。十七音に凝縮された被災地の景色とともに、刻まれた思いをたどる。


鳥帰る天のほころび縫ふやうに

冬銀河友は十年星に住み

すぐ逃げよ父の言葉に鳥帰る

三月の記憶掬えば砂零れ

生きよとて故郷の山芽吹きけり

戒名読む僧侶号泣入り彼岸

命を大切にして生きることが供養に 吉祥寺(大槌町吉里吉里)・髙橋英悟住職

俳句で震災を語り継ぐ 俳人・高野ムツオさん

本特集について

 本特集では岩手の内陸、沿岸に暮らす方たちが詠んだ6点の俳句を取り上げました。「十年目の今、東日本大震災句集 わたしの一句」(宮城県俳句協会編)からと、日本現代詩歌文学館の「天災地変と詩歌」展で紹介された作品です。弊紙では、2022年、24 年の3月にテレビ欄右上枠で震災俳句をシリーズで掲載しました。震災から14年を迎えるに当たり、俳句に込めた思いを作者に取材し、再構成してお届けします。

 俳句に添えた風景写真(9、10面)は、釜石市在住のフォトグラファーhana ozawaさんが沿岸被災地で撮影したものです。また、吉祥寺(大槌町吉里吉里)で2011年4月29日に行われた合同葬儀の写真(11面)を同寺のご厚意で掲載させてもらいました。

 震災後、沿岸各地には津波の被害からまちと人の命を守る巨大防潮堤が整備されました。津波伝承碑を見直す動きもあります。記憶の風化を止めることは、防災意識を高め、未来の命を守ることにつながります。祈りとともに紡がれる十七音の言葉も、その役目を果たすかもしれません。

【写真協力】フォトグラファー hana ozawaさん

▲フォトグラファー hana ozawaさん

古里の再生を見詰めて
 一枚一枚の写真から撮影時の状況が思い出されます。がれきが広がり、色をなくした古里。そんな中で咲いた梅の花に癒やされました。

9面_白鳥
10面_(右から)浪板海岸、梅の花と鳥居、鉄橋のサギ、山村の春景色
12面_梅の花
*いずれも釜石市、大槌町で2011~16年に撮影



11面_葬儀写真は吉祥寺提供

結びに

 2月26日に大船渡市で発生した山林火災は、平成以降、国内最大規模の山林火災となりました。大船渡は、東日本大震災でも津波で甚大な被害があった地域です。この特集を編集するさなかの出来事で、取材した大船渡の方とのやりとりで「毎日消防車の音が聞こえ、心が休まらない」という声を聞きました。またも自然災害に直面した方々のご心痛を思うと言葉がありません。

 その方は「他県からの消防の方々が大勢いらしている様子です。ありがたいことです」という感謝も口にされていました。内陸でも支援の動きが出ています。被災地域の復旧、復興へ皆で力を合わせていきたいものです。被災された方々に心よりお見舞い申し上げるとともに、一日も早く平常の生活に戻られることをお祈りします。(編集子)

企画・制作 岩手日日新聞社営業局

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