生きよとて故郷の山芽吹きけり 祈りのうた いわての震災詠 東日本大震災から14年
大船渡市 斎藤陽子さん 86歳
【句意】震災から1~2カ月後、故郷の大船渡市三陸町を初めて訪れた。津波で一変したまちの惨状に驚いた時、青々とした山が目に入った。自然ってすごい。こんなに芽吹いたもの、生きねばわがんね(生きなければ)と思った。
三陸町越喜来に生まれ、孫が小学校に入るまで波音が聞こえる所で暮らしてきました。親類はみな漁師。震災では船を守ろうと浜に下りたおいが亡くなりました。「生きなほす決意の髪を洗ひけり」。泣いてばかりもいられない、しっかりしなければ―。つらい日々、俳句を詠むことが立ち直りの助けになりました。1月の初句会では「初凪やいざ出航だ夫婦船」と詠みました。後継ぎがなくとも、夫婦でこぎ出す姿に希望を見いだしています。